VOC分析の方法|どこの声を使うかで結論が変わる

事業者向け | 市場・レビュー分析レポート
美容家電14データセット・観点言及337,226件で検証

VOC分析は「どこの声を使うか」で結論が変わる

顧客の声の分析は、手順よりも先に「どの声を材料にするか」で結果が決まります。出所によって見えるものが違い、片方だけを見ると存在しない問題を追いかけることになります。この記事は5つの出所を比較し、実データで落とし穴を示します。

観点言及 337,226件 14データセット・収録946商品 2026年6〜7月時点 レビュー原文は非掲載
声の出所 5種類を比較 実証データ 美容家電デバイス14データセット 観点言及 337,226件 収録商品 946点 出所 TrendViewer(HALDATA)

先に結論:VOC分析で最初に決めるのは手順ではなく「声の出所」

  1. 出所によって見えるものが違う ── 問い合わせ履歴には「困った人の声」しか無く、満足している大多数が写りません。競合との比較もできません。
  2. 母数と比較の両方が要るなら購入者レビュー ── 自社と競合が同じ形式で並んでおり、同じ観点定義で集計できる唯一の出所です。
  3. 汎用分類に押し込むと約4分の1が落ちる ── 実データでは観点言及337,226件のうち83,166件(24.7%)が、汎用10テーマでは拾えないカテゴリ固有の観点でした。
  4. 中立は不満ではない ── 中立が厚い観点は「不満」ではなく説明不足のサインで、打ち手が変わります。

集計の手順そのものは 口コミ分析の方法(4ステップ) にまとめています。この記事は、その前段にある材料選びを扱います。

VOC分析とは:設問を用意せずに始められる点が、アンケートと違う

VOC(Voice of Customer)分析とは、顧客が自発的に書いた・話した言葉を、評価の軸ごとの満足・不満の比率に変える作業です。ゴールは感想の要約ではなく、「観点名・好評率・言及数」の3列がそろった表です。

アンケートやNPSとの違いは、設問の有無にあります。アンケートはこちらが用意した設問にしか答えが返りません。設問に入れ忘れた不満は、どれだけ多くの顧客が感じていても数字に出てきません。「何が起きているか分からない」という段階では、この性質が致命的になります。VOC分析は設問を用意せずに始められるため、問題の在処を探す用途に向いています。

アンケートは「知りたいことを確かめる」道具、VOC分析は「知らなかったことを見つける」道具。順番を逆にすると、設問を作る段階で答えを決めてしまいます。

声の出所は5つ。見えるものと見えないものが違う

実務で使える出所は主に5つです。どれが優れているという話ではなく、写る範囲が違います。自社で手に入りやすい順に選ぶと、たいてい偏った結論になります。

出所見えるもの見えないもの競合と比べられるか
購入者レビュー購入前の期待と使用後の評価。観点ごとの満足・不満。価格帯ごとの差買わなかった人の理由。解約・返品の詳しい経緯できる(自社と競合が同じ形式で並ぶ)
問い合わせ・サポート履歴実際に困った内容。不具合の再現条件。説明不足の箇所満足している大多数。声を上げなかった不満できない(自社分しか無い)
コールセンターの通話文字にならない温度感。手順のどこで詰まるか電話をしない層(若年層に偏りが出やすい)できない
アンケート・NPS設問に対する定量的な回答。時系列の比較設問に無い論点。回答しなかった人の意見設問を共有できないため実質できない
SNS話題の立ち上がり。想定外の使われ方購入したかどうか。使用期間。書かない大多数言及量は比べられるが、評価の中身は揃わない

※「競合と比べられるか」は、同じ観点定義で集計して落差を測れるかどうかを指します。

比較が要るなら、購入者レビューから始めるのが早い

VOC分析でいちばん多いつまずきは、自社の問い合わせ履歴だけを分析して終わることです。数字は出ますが、それが高いのか低いのか判断できません。「静音性の不満が月30件」と分かっても、それが多いのか少ないのかは、比較対象が無ければ決まりません。

購入者レビューは、自社と競合が同じ形式で並んでいる唯一の出所です。同じ観点定義で集計すれば、カテゴリ平均との落差をそのまま測れます。実際に美容家電14データセット・収録946商品を横断集計すると、観点ごとの好評率はここまで開きます。

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レビュー解析ツール TV Analytics購入者レビューを観点別に解析し、御社の商品の強みと弱点を定量化するBtoBツールです。

図1|テーマ別 好評率(美容家電デバイス14データセット横断・好評率の低い順)

最も低い静音性44.3%と、最も高いサイズ・携帯86.3%の差は42.0pt

静音性44.3%N=1,535
耐久・故障49.6%N=1,554
安全性60.6%N=79,405
連続使用・持続60.8%N=4,063
バッテリー・電源62.1%N=15,339
お手入れ・清潔72.3%N=21,971
価格・コスパ75.1%N=26,450
効果実感79.4%N=45,407
操作・使いやすさ81.8%N=48,714
サイズ・携帯86.3%N=9,622

好評率=各テーマの好評言及数÷全言及数。テーマは複数カテゴリの観点を同一体系へ集約したもの。集計対象:美容家電デバイス14データセット・収録946商品/2026年6〜7月時点スナップショット/出所:TrendViewer(HALDATA)、楽天市場・Amazon.co.jpの購入者レビューを独自集計。

この表があると、自社の静音性が50%だったときに「カテゴリ平均を上回っている」と言えます。自社データ単独では、同じ50%が良いのか悪いのか永久に決まりません。

自社商品と競合商品を、同じ観点定義で並べて比べるところまでを自動でやるのがTrendViewerです。商品コード単位で観点別の好評率・不満率と、その月ごとの推移が出ます。

自社商品のVOC分析を見る(TrendViewer)

レビュー原文は掲載していません。観点ごとに要約した集計値をお見せしています。

結論が変わる落とし穴3つ

1. あらかじめ用意した分類に押し込む(実データで24.7%が落ちる)

最も多い入口は、汎用の分類表を用意して声を当てはめる方法です。速いのですが、その商品固有の観点が丸ごと抜けます。美容家電14データセットの集計では、観点言及337,226件のうち汎用10テーマに集約できたのは254,060件(75.3%)で、残る83,166件(24.7%)はカテゴリ固有の観点でした。

家庭用脱毛器の「メンズ・レディース・VIO対応の多様性」、温冷美顔器の「バッテリー持ちと充電の利便性」のように、そのカテゴリでしか出てこない軸がこの4分の1にあたります。ここが落ちると、差がつく論点が集計に載りません。

分類は声の側から作り、あとから命名する。用意した分類に当てはめる方式では、約4分の1の観点が最初から視野に入りません。

2. 中立を不満に寄せる

好評率は「その観点の好評言及数 ÷ その観点の全言及数(好評+中立+不満)」で出します。実務で結果が歪む最大の要因は、中立を不満側に数えてしまうことです。

中立は「触れているが評価を下していない」状態で、不満とは意味が違います。中立が厚い観点は、購入者が判断できるだけの情報を得られていないサイン、つまり不満ではなく説明不足として読みます。打ち手も別です。不満なら仕様の改良、説明不足なら商品ページや同梱物の記述の改善になります。ここを混ぜると、直す必要のない仕様を作り直すことになります。

3. 好評率の低い順に手を打つ

率の低い順と、影響量の大きい順は一致しません。図1で最も好評率が低いのは静音性44.3%ですが、言及はN=1,535件です。一方で安全性は好評率60.6%でも言及がN=79,405件あります。

影響量は「言及数 ×(1 − 好評率)」=好評でない言及の実数で並べます。静音性は約855件、安全性は約31,300件で、36倍の差があります。率だけを見ると、小さい問題から着手することになります。

VOC分析ツールを入れる前に決める4点

ツールの比較検討より先に、この4つを決めておかないと、出てきた数字の意味が定まりません。

  • 観点を誰が決めるか ── こちらで指定するのか、声の側から作らせるのか。指定する方式なら、カテゴリ固有の観点が落ちる前提で使う
  • 中立の扱い ── 好評/中立/不満の3値で持つか、2値に潰すか。潰すと説明不足と不満が区別できなくなる
  • 比較対象を用意できるか ── 自社データだけを入れても数値は解釈できない。競合を同じ観点定義で集計できるかが分かれ目
  • 判断に使う言及数の下限 ── 実務では1観点あたりN=30件未満は判断に使わない。数件を傾向として扱うと優先順位を誤る
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手作業でやるか、自動化するか

1カテゴリ・1回だけなら手作業でも終わります。分かれ目は継続して比較するかどうかです。観点定義を固定したまま毎月同じ集計を回し、競合も含めて追う場合は手作業が破綻します。観点定義が担当者によってぶれると、前月との差が「市場の変化」なのか「集計の揺れ」なのか判別できなくなるためです。

逆に、一度きりの調査であれば、観点を10前後に絞って手で分類しても十分な精度が出ます。

よくある質問

VOC分析とは何ですか?アンケートやNPSとどう違いますか?

顧客が自発的に書いた・話した言葉を、観点ごとの満足・不満の比率に変える作業です。アンケートやNPSはこちらが用意した設問にしか答えが返らないため、設問に無い不満は数字に出ません。VOC分析は設問を用意せずに始められる点が違い、問題の在処を探す段階に向いています。

VOC分析はどこから声を集めればよいですか?

出所は主に5つあり、見えるものが違います。競合と比べたい・母数を確保したいなら購入者レビュー、解約や返品の理由なら問い合わせ履歴です。自社の問い合わせ履歴だけを見ると、声を上げた人に偏るうえ競合との比較ができません。

用意した分類に当てはめるのは駄目ですか?

汎用分類に押し込むと商品固有の観点が落ちます。実データでは観点言及337,226件のうち汎用10テーマに集約できたのは254,060件(75.3%)で、残る83,166件(24.7%)はカテゴリ固有でした。分類は声の側から作り、あとから命名してください。

好評率が低い観点から順に手を打てばよいですか?

一致しません。最も好評率が低い静音性は44.3%でも言及はN=1,535件、安全性は60.6%でも言及がN=79,405件あります。影響量は「言及数 ×(1 − 好評率)」で並べます。

データの定義

観点(viewpoint)購入者が評価している軸。静音性・耐久・効果実感など
観点言及1本のレビューの中で1つの観点に触れている記述。1レビューは通常2〜4観点にまたがる
好評率その観点の好評言及数 ÷ その観点の全言及数(好評+中立+不満)
集計対象美容家電デバイス14データセット・収録946商品・観点言及337,226件/2026年6〜7月時点スナップショット
出所TrendViewer(HALDATA)。楽天市場・Amazon.co.jpの購入者レビューを独自集計。レビュー原文は掲載していません

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この記事について

執筆・分析:HALDATA Analytics 編集部

数値はすべて TrendViewer(HALDATA)の集計値です。レビュー原文は掲載せず、観点ごとに要約した集計値のみを掲載しています。

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